建学85年を誇る実践学園中学・高等学校(眞橋敏男理事長・校長/東京都中野区) では、IWB(インタラクティブ・ホワイトボード)を全教室に導入し、わかりやすく効果的な授業を展開している。その意図やIWBを利用する魅力について、鵜飼公則教頭に話を聞いた。
導入製品
アクティブボード95
※注:2014年7月現在は、
アクティブボード395pro、アクティブボード587proMSもご使用いただいています。
導入のきっかけ
実践学園中学・高等学校は、革新的な教育カリキュラムに基づき、各教科できめ細かく理解し易い中高一貫教育の実践と、それを可能にする教育条件・教育環境の整備を進めている。その一環として、5年前に特別教室を含む全教室に導入されたのが教育用IWB「アクティブボード」だ。
「アクティブボード」は教室などでの常設設置を前提として開発されたIWBで、教員が作成した教材などのPC画面をホワイトボードに投影し、そのボード上を専用のアクティブペンで操作しながら、文字・画像・音声・動画などを活用できる。また、ボードをクリックすることで画像を動かしたり、次のシートを映し出したりすることもできるほか、一部の文字を隠しておき、生徒にしばらく考えさせてから正解の文字を出すなど、創意工夫を凝らした授業が行える魅力を持っている。
同製品を導入した理由について鵜飼教頭は、従来の授業形態を変えて先進的かつ効果的な授業を提供したいという思いがあったと語る。その中で、IWBを活用した教育の先進国イギリスに視察し、その効果を確認できたこと。加えて、新学習指導要領で各教科・科目等について相互の関連を図り、発展的・系統的な指導をすることが求められていることを挙げた。
「たとえば、世界史の授業では、日本史と地理を含めた3教科をそれぞれ相互に関連付けて教えます。その場合、地図・年表・画像などでわかりやすく教えるにはIWBシステムが最適だと考えました。」
しかし、こうしたICTを活用した授業を効果的に実現するためには、教員がそれを使いこなせるかどうかがカギになる。
その点についても同学園は抜かりがない。「全教員に3ヶ月の研修期間を設け、基本的な操作方法などを徹底的に指導しました。さらに、校内オンラインを利用した教材や素材集の共有化を図るなど、教員がIWB授業をスムーズに行える環境を構築しました」と振り返る。
その成果もあり、現在では全ての教員がアクティブボードを自由に使いこなし、理解しやすく効果的な授業を展開しているという。さらに、最も高度かつ効果的に利用している教員に対して「IWBシステムスーパーティーチャー認定制度」を設けるなど、教員の意欲を高め、授業の質を上げる取り組みにも着手している。
こうしたなか、「アクティブボード」を利用する効果の1つが、授業進度をアップさせることで、より中身の濃い授業を可能にすることだ。「教員はあらかじめ作成した教材をもとに授業が行えるので、情報の即時提示と板書時間が短縮できます。つまり、授業を効率化することで、掘り下げた説明を加えることや生徒に向き合う時間が増えるのは大きな効果ですね」と評価する。 また、「アクティブボード」には、このような従来通りの板書を基本とした授業資料を簡単に作成できるソフトウェア「アクティブインスパイア」(同学園では、旧バージョンの「アクティブスタジオ」を使用)が付属されている。何枚ものページで構成された「フリップチャート」と呼ばれるファイルを作れるため、教員は授業の展開を想定して、板書を含めた教材の準備ができるのが特長。さらに、文章だけでなく絵、写真その他のオブジェクトをページに追加する、インターネット上のホームページにリンクするなど、多彩な演出による視覚効果で生徒の集中力を高めることができる。
続いて、授業の様子をいくつか視察させてもらった。飛び込みにもかかわらず、ほとんどの教室で「アクティブボード」を活用しており、日常的に浸透していることを伺わせる。
95インチ大画面の迫力は、まさに黒板そのもの。しかも、アクティブペンは板書だけでなくほとんどのソフトウェアの操作が行えるので、どの教員もインターネットなどの関連した情報に素早く切り替えができていたのが印象的だった。
また、こうして授業で板書した内容を含めて保存・印刷できるのも「アクティブボード」の優れた機能だ。ネットワークに保存して教員同士で情報の共有化を図るとともに、蓄積された情報資源は有効に活用できる。鵜飼教頭も「年を跨いで利用できるのもデジタルならではの良さ。たとえば、ベテランの教員の板書内容を保存して共有すれば、経験の浅い教員のスキルアップにも結びつきます」と強調した。
同学園では、昨春開館した生徒のための学びの館「自由学習館」においても、こうした教材を再度確認しながら復習ができるスペースを用意。これのみならず、IWBシステムのさらなる有効利用に向けて、今後は生徒との双方向な教育手法へとステップしていく意向だ。
(学習情報研究 2012年1月号掲載)